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地域により変わる訪問入浴のかたち 〜お客様一人ひとりに寄り添う〜

 都市部・郊外・地方…地域ごとに異なる風景 

日本の入浴文化は1500年以上の歴史を持っていると言われ、単なる衛生習慣を超えた、精神的な癒しとも深く結びついたものとして私達の社会に当たり前のように根付いています。
しかし高齢者、特に寝たきり高齢者の場合、どのような地域に住んでいるのか、どのような生活環境で暮らしているのかによって入浴習慣の維持が難しくなるケースが少なくありません。
我が国にある1600以上の訪問入浴事業者はこのような高齢者の方々に入浴サービスが受けられるように
様々な取組みや工夫をしています。

 このコラムではどのようなお客様がどのような形で訪問入浴サービスを受けているのかご紹介したいと思います。 

1. そもそも訪問入浴とは?安心と清潔を届ける在宅ケアのプロ

そもそも訪問入浴とはどんなサービスなのでしょうか?
私も介護の現場を7年経験し、ケアマネジャーの資格をとって、ASCare(アスケア)のケアマネとして働くようになるまで
(お恥ずかしながら・・・)このサービスをあまり知りませんでした・・・

1-1 訪問入浴サービスの基本的な内容

訪問入浴とは、入浴が困難な高齢者や障害をお持ちの方のご自宅に、看護師と介護職員が専用の入浴機材を持ち込んで、浴槽の設置から入浴介助までを行う在宅介護サービスの一つです。
よく間違われるケースとして、「自宅の浴槽を使って職員が介助して入浴する」「入浴車両に設置してある浴槽に入浴する」
などがあります。
ちなみに私は「お客様を入浴車までお連れして車内の浴槽で入浴する」ものと思っていました。

1-2 どのような方が訪問入浴サービスを利用されるのでしょうか?

 訪問入浴を利用される方の多くは、要介護度が高く、自宅での入浴が困難な方です。 

具体的には、寝たきりの状態に近い方、立ち上がりや移動が難しい方、医療的な配慮が必要な方などが挙げられます。

ご自身で浴槽をまたぐことができなかったり、浴室まで安全に移動できなかったりする場合、自宅にお風呂があっても入浴は大きな負担になります。
年齢層としては、80代・90代の高齢者が中心ですが、決して高齢者だけに限られません。
若年層でも、難病や重度の障がい、事故や病気による後遺症などによって入浴が困難な方が利用されるケースもあります。
 訪問入浴は「年齢」ではなく、「その人の身体状況」に寄り添うサービスなのです。 

ご家族構成もさまざまです。
一人暮らしの方、配偶者と二人暮らしの方、同居するご家族がいる方。
 特に多いのは、ご家族が介護を担っているものの、入浴介助までは難しいというケースです。 

入浴介助は転倒や事故のリスクが高く、体力的・精神的な負担も大きいため、家族だけで行うには限界があります。
住居状況についても、戸建て住宅・集合住宅・公営住宅などさまざまです。
浴室が狭かったり、段差が多かったりすることで、安全な入浴が難しいお宅も少なくありません。

 訪問入浴サービスでは、専用の浴槽を持ち込み、その方の居室で安全に入浴できる環境を整えます。 

「自宅のお風呂に入れなくなっても、住み慣れた家でお湯につかめる」
――それは、利用者様にとって大きな安心につながります。
訪問入浴を利用される理由は、「清潔を保つため」だけではありません。

湯船につかることで血行が良くなり、身体がほぐれ、表情がやわらぐ。
「気持ちよかった」「さっぱりした」という言葉とともに、笑顔が戻る瞬間があります。

入浴は、身体のケアであると同時に、心のケアでもあるのです。

2.お客様の住んでいる地域によってどのような特徴があるのか?

お客様が住んでいるところは様々。駅周辺に住んでいる方もいれば郊外の方もいますし、山間部の方もいらっしゃいます。
訪問入浴は基本的にどのような地域であってもサービス提供できるよう様々な工夫と対応をしています。

2-1 駅周辺の特徴

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通常の一軒家のお宅に伺う場合・・・
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1. 駐車場に車を停めて、ご自宅の電源をお借りして車内ボイラーを稼働させます。
2. そしてお客様宅の水道水をボイラーに引き込んで温めます。
3. その温めたお湯を入浴車から取り出してお部屋に設置した浴槽にためていきます。

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この作業が駅の近くの高層マンションにお住まいの方になると・・・
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ホースが届かずマンションのお部屋から水道水を入浴車に引き込むことができなくなってしまいます。
このようなケースでは入浴車のボイラーを使わずにマンションの給湯器をお借りしてお湯を貯めていくケースが一般的となります。
ただしホースが届く階層にお住まいのお客様であればマンションであってもお部屋の水道と入浴車をホースで繋いで水道水を引き込んでボイラーで温め、
浴槽にお湯を貯める、という通常作業を実施しています。

また都市部では駐車場が自宅になく、パーキングを借りているケースもあります。
そのような場合は近隣のコインパーキングに訪問入浴車を停めて自宅まで浴槽を運んだりするケースもあります。
この場合、マンションのようにホースが届かないことがほとんどなので給湯作業で対応することになります。

2-2 山間部の特徴

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住宅街だけではなく、山間部のお客様宅にサービス提供するケースもあります。
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山間部では都市部のように住宅が密集しておらず、信号も少ないのでが特徴ですが、
一軒一軒のお客様のお宅が離れているために移動時間が長くなる傾向があります。

道幅も所々にせまいところがあるので、すれ違いには要注意。
助手席や後部座席の職員が車のまわりをしっかりと確認して運転手をフォローします。
動物との遭遇もあります。イノシシや鹿などが入浴車の前に飛び出てくることもありますし、
私は温泉地近くのお客様宅へ向かうときに野生の猿に遭遇しました!

また、今ではかなり少なくなりましたが、場所によっては携帯電話の電波が不安定なところも・・・。
端末機器を使って一軒ごとにサービス提供の記録をしているので、電波が届かないと記録の保存が
できないこともごくたまにあります。
このような場合は念のために紙に記録したりしています。

都市部でも山間部でも何らかの大変なことをありますが、車の移動でお客様のお宅を巡回しているので、
桜の季節や新緑の季節、紅葉の時期などに景色を堪能できるのはこのお仕事ならではの魅力です。
(もちろん安全運転を徹底しています!)

2-3 こんなお宅も!

なんとも羨ましい話ですが、温泉街のお客様で自宅の水道が「源泉かけ流し」のお宅がありました。
もちろん蛇口から温泉が出るのでボイラーで沸かすことも不要!
ホースで訪問入浴車に繋げることはせず、直接浴槽に温泉を引き込んで入浴して頂きました。

3.訪問入浴を受けたお客様やご家族の変化

訪問入浴サービスを導入したことで、まず大きく変わるのが サービス提供を受けたお客様ご本人の表情です。 

入浴前は表情が硬かった方が、お湯につかった瞬間にふっと力が抜け、 「気持ちいいね」 と声を漏らす。
その一言が、ご本人にとってどれほど大切な時間なのかを物語っています。
職員3人で連携してサービス提供するので、3人とお客様との会話がとても弾んだときにはまるで化学反応が起こったみたいに
パッと明るい雰囲気変わることがあります!
この瞬間の感覚はやっぱり実際に経験してみないとうまく表現できません。

3-1 皮膚トラブルや不快感の軽減だけでなく心の変化も!

身体が清潔に保たれることで、皮膚トラブルや不快感が軽減されるのはもちろんですが、
それ以上に大きいのが、「自分は大切にされている」という実感です。

自分ではできなくなったことを、専門のスタッフが丁寧に、当たり前のように支えてくれる。
その積み重ねが、安心感や前向きな気持ちにつながっていきます。

訪問入浴サービスをご利用される方々は、 「自分ではもうできないことが増えた」「家族にこれ以上迷惑をかけたくない」 

そんな思いを抱えていることも少なくありません。
だからこそ、専門職がチームで訪問し、安心・安全に入浴を提供することには、大きな意味があります。
 訪問入浴は、生活の質を守るためのサービスなのです。 

3-2 生活リズムを整える

訪問入浴は生活リズムを整える役割も果たします。
毎週、決まった曜日の決まった時間に訪問することが多いので
「今日はお風呂の日」という楽しみが生まれることで、
お客様の表情が明るくなったり、会話が増えたりする方も少なくありません。

回数を重ねるごとにどんな会話が好きなのか、何に興味があるのかなどわかってきますので
自然と会話する内容もお客様に合わせられるようになります。
この関係構築も訪問入浴サービスの楽しさの一つです。

3-3 ご家族の負担軽減にも

訪問入浴によって救われるのは、お客様だけではありません。
ご家族の負担が大きく軽減されることも、非常に重要な変化です。

在宅介護において、入浴介助は最もハードルの高いケアのひとつです。
転倒の不安、体力的な負担、事故が起きたらどうしようという緊張感。
それらを抱えながら入浴介助を行っているご家族は、心身ともに疲弊していきます。

訪問入浴を利用することで、
「お風呂だけはプロに任せられる」
「安心して見守る立場でいられる」

そんな余裕が生まれます。

その結果、ご家族がお客様ご本人と穏やかに向き合える時間が増え、
介護が「苦しさ」だけのものではなくなっていく。
訪問入浴は、家庭全体の空気をやわらかく変えていく力を持っているのです。

4.現場で働くスタッフの想い

ASCare(アスケア)でも現場で働くスタッフは、毎日さまざまなご家庭を訪問します。
入浴というサービスは同じでも、「対人コミュニケーションサービス」という視点で見ると
同じ仕事はひとつとしてなく、お客様の状態や住環境、ご家族の思いも一人ひとり異なります。

現場では、3人一組のチームで行動します。
それぞれが役割を持ち、声を掛け合いながら、安全で快適な空間と時間をつくり上げていきます。
機材の準備、入浴介助、体調管理――すべてが連携プレーです。

 スタッフが口をそろえて話すのは、「大変な仕事だけど、やりがいが大きい」ということ。 

その通りです!私も転職を繰り返してきましたが大変なことは前職よりも多いかもしれません。
でも楽しいことや、やりがいはそれ以上に多いし、 前職と比べても楽しい事ははるかに多いのです。 

入浴後にお客様から「ありがとう」「また来てね」と声をかけてもらえる瞬間。
ご家族から「お風呂の日は、本人も私も気持ちが楽です」と言われたとき。
その一つひとつが、「この仕事をしていてよかった」と感じる原動力になります。

そんな時には私達がケアをしているようで、実は私達がお客様から元気をもらっていたんだなぁ、
ということに気づかされます。

決して楽な仕事ではないのかもしれません。
ですが、人の生活に直接役立っている実感を、これほど日々感じられる仕事も多くはありません。
この仕事を知らなくても人生で損をするわけではなく、大きな影響はないかもしれません。
でもこの仕事に携わると自分の人生が豊かになるし、大きく価値観が変わるのではないかと私は思っています。

訪問入浴は、それくらいスタッフ自身の成長や価値観にも、大きな影響を与える仕事なのです。